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白銀の女戦士シルヴィア
小説:酒井仁 挿絵:neropaso

 

 ダンジョン内でのルート喪失、おまけにビキニアーマーなどと言う恥ずかしい装備を装着しているためか、シルヴィアの注意力はいつになく散漫になってしまっていた。
 だから───いつもなら見逃さない地面のほんの些細なトラップにうっかり触った瞬間、床がばくりと開いてシルヴィアを飲み込んだ。
「うあ……っ」
 足元が消える感覚、一瞬ふわりと身体が浮く無重力。真下から吹き上げる風の流れに長髪が揺れる。落とし穴のそこは暗く、そこにどんな悪辣な罠が仕掛けられているかもわからない。
「ち……くぅうっ!」
 がりっ、がががっ。腰から抜いた短剣を床に突き立てて落下を防ごうとするが、その時には女戦士の半身は、ずっぽりと落とし穴に浸かっていた。そこにあったのは残忍な串刺し槍でも毒沼でもなく……何百匹と言う触手魔物が蠢いていた。
「ひっ」
 ぬらぬらとした体液にまみれた触手魔物は、新たに得た獲物にたちまち群がってきた。この魔物は牙などは持っていないが、とにかく群れで小動物を搦め捕ってじわじわと消化するのだ。
 ビキニアーマーで守られていないシルヴィアの太腿や二の腕に絡みついてくる、その柔らかで生温かい感触、それに生き物独特の生臭さが恐ろしく不愉快だ。ともすれば脚絆の内側にでも潜り込んできそうなその感触に、女戦士は顔を歪める。

 
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